マイペースチャリダーが行く

ちょうど古稀を迎えた理系チャリダーのブログです。

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シューズONが歩きやすい理由

 今回記事では、私がウォーキング用に使っているシューズONについて紹介しようと思う。また、その歩きやすい理由について検討してみた。

 

 シューズON「クラウド5」の外観

 

 

(1)シューズONについて

 ONはスイスのランニングシューズブランドで、クラウドテックという技術を用いて、雲の上のような履き心地がウリのメーカだ。

 私のONとの出会いは、過去記事(文献1)で紹介したように、内反小趾の治療のために通った整足院で勧められたのがきっかけだった。当初は内反小趾対策として散歩専用だったが、今はほとんど全ての外出で利用している。

 ONについては、サブトレウォッチ(文献2)でも紹介されているが、私が考えるシューズONの特長は以下のとおり。

シューズONの特長

 1)ソールの弾力が大きく、高級な絨毯の上を歩くような感覚で、楽に歩ける。

 2)足の甲を絞っているためか、くつサイズをあまり気にせずに履ける。

 3)靴紐不要の設計なので、脱着が簡単。

 特長だけだと、公正さに欠けるので、難点と思われる点についても、以下に示す。

シューズONの難点

 1)ONの基本形は防水仕様でないため、雨の日は内部に水が浸入しやすい。

 2)防水仕様のシューズもあるが、少し蒸れやすい。

 3)在庫のある実店舗が少ないため、試着しての購入がやや困難。

 

(2)シューズONの買い換え

 2021年に最初に購入したシューズONが、老朽化が目立ってきたため、買い換えることにした。2021年は整足院で購入したのだが、買い換えは、店頭で自由に商品を選んで購入したいと考えてONに問い合わせると、店頭在庫がある近くの店は直営店「OnTokyo」(原宿キャットストリート)とのこと。

 原宿ならば、東京観光ボランティアの原宿または渋谷の活動日に行けるぞということで、4月5日(金)に開店10分前にお店に行った。しかしながらこの日はインバウンドの海外客の長蛇の列に巻き込まれたため、購入は断念。

 4月19日(土)に再チャレンジ。今度は、開店11時の30分前にお店に到達。この日は何とか11時開店と同時に入店出来た。入店したら、商品のある2階に向かう。お目当てのクラウドと名の付く商品だけで、30種類以上あるので、店員にウォーキング用の標準的な機種を尋ねたところ、クラウド5とその防水機種(クラウド5ウォータープルーフ)とのこと。非防水か防水のどちらにするか悩んだが、蒸れるのを避けるためこれまでと同様な非防水の機種「クラウド5」を購入することにした。色は自己主張の少ないオールブラックでお値段は17380円也。めでたしめでたし!!

 

(3)シューズONが歩きやすい理由

 今回、シューズONが歩きやすい理由について考察してみた。シューズON、特に私が購入したクラウド5の特徴はソールのゴム形状だ。靴底には、中空パイプ形状のゴムが整然と並んでいる。これらのゴムは、以下の写真に示すように、左右2列で縦方向に8段、全体で16ブロック構成になっている。

 

「クラウド5」の靴底形状

 

 この特徴的な靴底形状による効果を単純化して考察するために、以下に示す検討モデルで考察した。

検討モデル

1)ゴムは、つま先側の前方ゴムと、かかと側の後方ゴムの2つと仮定する。

2)歩き方は、かかとで着地した後、つま先で蹴る方式を仮定する。

 

 

 

 

 

a)無負荷状態

 肌色部分はシューズと足が一体化した状態を表しており、灰色は関節部分。この図は、シューズや足には力が加わっていない無負荷状態を示している。

 

 

 

 

b)かかと着地

 この図はかかとが地面に着地して、後方ゴムがつぶれた状態を示している。

 

 

 

 

 

c)足全体着地

 この図は、足全体が着地した状態。後方ゴムの反発力でかかとを持ち上げる力(赤色)が作用し、そのモーメントにより、つま先の前方ゴムをつぶす力(青色)を増強する効果がある。

 

 

 

d)つま先引き上げ

 つま先引き上げにおいては、後方ゴムは完全に無負荷状態になっている。前方ゴムは反発力(赤色)が発生して、つま先引き上げる力を増強する効果がある。

 

 

(e)考察のまとめ

 上記モデルでは、独立して配置された2つのゴムが時間差をもって反発力を発生させることにより、それぞれの反発力が、くつを回転させて前方ゴムに力を伝搬させたり、くつの引き上げる力を増強したりして、より少ない力で歩けるようになると考えられる。

 実際のクラウド5は2列8段の16ブロック構成で、より複雑だが、さらに細かな時間差で反発力が作用して、歩く力をアシストするものと考えている。

 このように、独立したゴムの反発力が時間差をもって作用することにより、歩くのをアシストするため歩きやすいと考える。勝手ながら、私はこのモデルを反発力時間差モデルと命名した。

 

(4)シューズの反発力に関する過去の検討事例の調査

 実は、上記考察の前に、シューズにおける反発力利用に関する過去の検討事例をWEB調査した。

 調査の結果、シューズの反発力利用で有名な事例は、2017年にナイキが発売した厚底シューズ(ズームヴェイパーフライ4%)だ。(文献3)(文献4) ナイキの厚底シューズの登場以来、マラソン界ではシューズ戦争が繰り広げられている。

 例えば、望月修氏は円形靴底の場合、かかと着地した反発力のモーメントにより推進力に転換されると説明している。(文献5)

 一方、園原健弘氏は厚底シューズが効果的な走法は、フォアフィット走法という、つま先が着地する走法においてのみ、反発力が前方への推進力に転換されるという。一方、足中央部やかかと着地の走法は厚底シューズの恩恵が得られない。(文献6)

 調査の結果、過去の検討事例では、どちらかというとシューズを単一の反発点として扱い、そこからの反発力の方向によって、得られる推進力によってランニングが増強される説明が主流だと分かった。

 今回私が提案した反発力時間差モデルは、シューズが複数の反発点(=ゴム)で構成されていて、それぞれが時間差をもって反発力を作用することにより推進力が得られる点がポイントだ。

 

(5)最後に

 今回は、ランニングやウォーキングに門外漢の私が、ずうずうしくも新しいモデルを提案してしまった。私が今回提案したモデルは、いろいろ問題もあると思うが、読者諸氏のご批判・ご指摘を仰ぎたいと思う。

 一方、メーカ等の専門家の皆様は、企業秘密の壁などで、なかなかメカニズム公表は難しい側面があると思うが、定性的な分かりやすい説明を要望して、本記事のしめくくりとする。

 

 

参考文献

(1)2022/5/26 マイペースチャリダーが行く「サイクリストと健康 注意すべきポイント-2」

(2)2024/2/23 サブトレウォッチ「Onスニーカーの評判は?一体何がそんなに人気なの?驚きの真実をご紹介!」

(3)2020/2/1 スポーツ栄養WEB「長距離用厚底シューズ「ヴェイパーフライ」はなぜ速い? 科学的根拠を探る」

(4)2019/10 J.SportsSci. Vol37 Isuue20 pp.2367-2373, "Running economy, mechanics, and marathon racing shoes" (Abstractのみ確認)

(5)2023/3/31 望月修著「眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話」pp.62-65

(6)2021/4/15発表、2023/12/1更新 ULLR MAG、園原健弘「すべての人が厚底を履きこなせるわけではない?走法から考える理想のシューズ選び」