前回記事では、自転車輸送方法と距離の関係について検討した。今回は、私の一押しの自転車輸送方法である「飛行機+レンタカー」で非常に有効なSCICON社製のAero Comfort3.0について紹介する。
(1)購入動機
AeroComfort3.0を購入するまでは、私は段ボール箱を利用して飛行機輪行していた。しかしながら私が退職して頻繁に国内ライドに参加できる状況となった2018年以降は、使い捨て段ボールに代えて継続利用可能な、AeroComfort3.0を購入することとした。
注:今回ご紹介するAeroComfortは、2018年製AeroComfortプラス3.0です。現在販売されているものと、基本的な構造は変わらないと考えています。
(2)利用方法
1)飛行機輪行スタイル
下図に飛行機輪行スタイルを示す。AeroComfortは立てた状態の移動が好ましいので、空港までの移動はバンが基本だ。羽田空港へはマイカーのミニバン(フリード)で移動するが、目的地の最寄りの空港からはレンタカーを利用する。レンタカーはミニバンでも良いが、私は費用節約のため軽バンを利用している。
2)レンタカー選び
ここでのポイントは、レンタカー選びだ。たまたまレンタカーの荷室が小さいと、Aero Comfort3.0の搭載に苦労する。参考までに、これまで利用した軽バンの荷室写真を以下に示す。
ホンダN-box
N-Boxは、荷室の高さと長さも十分あるので、このように完成車も余裕で縦置きできる。走行中に自転車がばたつかないように紐で縛るのも重要だ。
日産ROOX
ROOXは、荷室の高さは十分あるので、AeroComfort3.0を問題なく立て積み出来る。完成車も立て積み可能だが、荷室の対角線上に搭載する必要があるかもしれない。
スズキ ワゴンR
ワゴンRは、荷室高さが十分でないため、Aero Comfort3.0の搭載にかなり苦労した。具体的には、この写真に示すように助手席を前方に移動して後部座席と助手席の間に出来たスキマにAero Comfort3.0のキャスターを入れるという方法で、何とか搭載出来た。
3)ベストのレンタカーは?
これまでの利用実績を以下にまとめておく。レンタカーの私の個人的な評価は、ミニバンのシェンタは別格として、軽バンはN-boxがベストで、ROOXやタントも荷室が大きいので問題は無い。ワゴンRは何とか使えるものの、出来れば避けたい車種だ。
(3)構成・使い方
以下にAeroComfort3.0の構成と使い方を簡単に説明する。
1)AeroComfort3.0の構成
上の写真はAeroComfort3.0のチャックを開けて開いた状態だ。フロントエンド固定軸とリアエンド固定軸には、それぞれフロントフォークとシートステーをクイックリリース(QRと略す)で取り付けて、自転車を固定する。外した車輪は、両側の車輪収納ポケットに収納する。赤いベルトは、自転車の固定補強のベルトだ。
2)使い方
フロントエンド固定
AeroComfort3.0に付属するQRを用いてAeroComfortのフレームにがっちり固定する。
リアエンド固定
リアエンドもQRでがっちり固定。同時取付けのプロテクターでリアディレイラーをガードする。
リアエンド固定軸にチェーンたるみ防止ゴムがあるが私は使わない。私の場合、これを使うとリアディレイラー角度が垂直になり、リアディレイラーがベースと干渉してリアエンドが固定できなくなるからだ。
保護具装着とバンド固定
トップチューブやハンドルバーの保護具を装着。また赤い固定用バンドで自転車とAeroComfort3.0の固定を補強する。
自転車梱包完了
自転車梱包の完了状態。大きさは、3辺合計約263cm(W50cmXH93cmXD120cm)だ。中型ジェット機以上ならば預け荷物で搭載可能だ。ただし、プロペラ機への搭載は難しい。
(4)ミニ改良
私がAeroComfortをこれまで6回利用した経験上、リアエンド固定軸やフロントエンド固定軸に関するトラブルが数回あった。そのトラブル解消のため、今回ミニ改良を行ったので、以下に紹介する。
1)トラブルの背景 固定軸とQRアダプタ
下の写真は、リアエンド固定軸の外観だ。リアエンド固定軸とフロントエンド固定軸は、スルーアクスル対応となっており、内径12mmパイプにQR変換アダプター(以下QRアダプタと略す)が挿入された状態になっている。すなわち、QRアダプタを外せば、スルーアクスルの自転車が取付け可能になる設計で、私の自転車はクイックリリース装着タイプなので、QRアダプタを固定軸に差し込んで使用している。
2)トラブルについて
以下の断面図に示すように、アルミ製のQRアダプタは、内径12mmの固定軸内部に差し込まれていて、Oリングで固定軸に固定されている。
トラブルは、何かの拍子でこのQRアダプタが内部に押し込まれてしまうことだ。そうなるとクイックリリースを利用した自転車固定が出来ないため、宿泊先のホテルで工具等を借りて、QRアダプタをつまみ出して、QRアダプタを正しい位置に戻す必要があった。旅先は適切な工具が無いこともあり、QRアダプタを元に戻すのに苦労した。
3)ミニ改良
このようなQRアダプタの固定軸内部への押し込まれを防止するため、2つのQRアダプタの間にパイプ型スペーサを挿入するミニ改良を実施した。以下の図に示すように、適切な長さのスペーサをQRアダプタの間に挿入して、QRアダプタの押し込まれを防止する。
下の写真は、QRアダプタとパイプ型スペーサの外観だ。パイプ型スペーサは、ステンレスパイプ(外径9.5mm、内径8mm)を40mmと70mmにカットして製作し、各々をフロントエンド固定軸とリアエンド固定軸に挿入した。
(5)Oリング破損とその対応
本ブログ執筆中、QRアダプタを固定軸から外す際に、実はOリングを破損させてしまった。QRアダプタを固定軸から外す場合は回転しながら少しずつ外すのがポイントのようで、回転させずに強引にQRアダプタを引き抜くとOリングが破損しやすいようだ。
QRアダプタは、SCICONの欧州向けオプション部品とWEB掲載されているので、何とか購入できるかもしれないが、今回は互換性のあるOリングを国内で探すことにした。
以下に、試してみたOリングの型番と結果を示す。結論的には、マスオカ製Oリング型番P-9が最もきっちりと固定できた。もしもOリングの替えが無くて困っている方は、国内の互換性Oリングは値段も安いので、下表を参考にしてほしい。
(6)終わりに
最後まで根気よく長文記事をお読み頂いた読者のみなさまに、まずは感謝します。当初はミニ改良だけの記事を書くつもりだったのだが、いきなりミニ改良だけを書いても意味が分からないと言うことになり、記事が長くなってしまった。
最後のまとめとして、Aero Comfort3.0の特長と欠点を以下に示す。いろいろと欠点もあるが、飛行機輪行の場合、レンタカーと組み合わせれば、スムーズにライドに参加できるので、私個人的には一押しの輪行バッグである。
1)特長
1)自転車を金属製のパイプフレームにがっちり固定できる。
2)車輪以外の自転車部品を外す必要が無い。
3)キャスター付きなので、スムーズに移動できる。
4)内部に余裕があるので、サイクルシューズやヘルメット等が収納可能。
5)部品保護が充実(ディレイラー保護金具、フレームやハンドルの保護具等)
2)欠点
1)高価である。
2)3辺合計が260cm程度と大きいので、移動に荷室の大きな車が必要。
3)空港のX線検査機は通らないので、目視検査のため早めのチェックイン必要。