当ブログ最初の記事は、2020/2/11に投稿した「自転車は最速の人力移動手段」という記事だった。この記事では、自転車=人力最速=人類最速を示したつもりだった。しかしながら、現時点で「人類最速」というキーワードでグーグル検索すると、陸上選手のウサインボルトが人類最速となっていて、自転車は出てこない。
そこで、「人力最速」というキーワード検索にすると、自転車の記事が検索されて、私のブログもヒットする。自転車が「人類最速」でなく「人力最速」というのは少しさみしい感じもするが、人類最速は、器具や乗り物を使わないで最速という意味で、「人力最速」は器具や乗り物は使っても良いが、走行エネルギー源は人力のみという意味と理解すれば、納得できる。
そこで本記事では、「自転車が人力最速の理由とは?」と題して、自転車が人力最速の理由について考察してみたので、以下に紹介する。
(1)人力スピード記録
以下のグラフは、当ブログ最初の記事のグラフをアップデートしたものだ。今回のアップデートで、自転車(64.94km/h)[4]とスピードスケート(55.07km/h)[5]の最新の世界記録にアップデートした。なお、今回アップデートしたグラフにおいては、一番速い144.17km/hの記録[1][2][3]以外は、静止位置からのスタート方式(Standing start)に統一した。

スピードスケートの記録(55.07km/h)と自転車の記録(64.94km/h)の差異はわずか18%だが、1Hの走行距離の世界記録で比較すると、自転車56.792km[4]に対してスピードスケート43.735km/h[6]と、その差は30%程度に大きくなる。そのため、自転車が確実に速いと考える。
一方ランニングは、2009年のウサインボルトの100m短距離走記録(37.58km/h)[7]がいまだ健在だ。
グラフの一番速いトッドラインカートの記録(144.17km/h)は、5マイル助走した後の200m計測区間での記録で、いわゆるFlying startによる瞬間最大速度だ。この種の記録として、自動車のスリップストリームを利用したスピード記録[8][9]もあるが、自転車単独のスピード記録としては、この144.17km/hが最速だ。
トッドラインカートらのAeroVelo社のチームは、リカベントタイプ自転車に空力抵抗低減のためのエアロケースをかぶせたEtaと呼ばれる自転車を開発した。彼らは、米国ネバダ州バトルマウンテンで2016年に開催されたWHPSC(World Human Powered Speed Challenge)大会で、144.17km/hの世界記録を樹立した。[1][2][3] このEtaは、我々のよく使う自転車とはかなり異なっているものの、自転車の一種であることは間違いない。
(2)ランニングとの比較
ランニングと比較して、何故自転車が速いのかを考えてみる。一つの要因は、地面に接触している時間がランニングに比べて自転車は長い点だ。ランニングでは、シューズが地面を蹴る一瞬で、推進力を得る必要がある。そのため、どうしても大きな力が必要になる。それに比べて、自転車のタイヤは、地面に常時接触しているため、連続的な小さな力を長時間印加することで、大きなパワーを地面に伝えて速く走ることが出来る。
もう一つの要因は、ランニングは地面を蹴って走るため、どうしても上体を起こして走る必要があるが、時速30km以上の領域では走行抵抗の80%以上が空力抵抗のため、空力抵抗の影響をもろに受けてしまう。それに比べて、自転車では車体に人間が乗って走るため、例えば、タイムトライヤル用(TT)バイクや、リカベント車などの車体の工夫により、空力抵抗を下げることが出来る。
(3)アイススケートとの比較
アイススケートと比較して、自転車が何故速いのかを考えてみる。一つの要因は、氷の摩擦係数が自転車の転がり抵抗に比べて大きいことが挙げられる。氷の摩擦係数は、測定値で0.01程度が報告されている。[10] その摩擦係数に比べて、自転車の転がり抵抗係数は3倍程度低い値が報告されている。例えば私の愛用しているコンチネンタル製GP5000(700×25c)の転がり抵抗の実測値は0.00321だ [11]。そのため、摩擦や転がりに関するパワーロスは、自転車の方が少なく有利だ。
もう一つの要因は、アイススケートは低くかがんで滑るものの、大きく腕の振って滑るので、空力抵抗は自転車に比べれば不利だ。自転車は人体を車体に乗せて走ることが出来るため、(2)でも述べたように、タイムトライヤル用(TT)バイクや、リカベント車などの車体の工夫により、空力抵抗を下げることが出来る。
(4)自転車は何故速いのか
これまで自転車が何故速いのか検討してきた。それらを以下にまとめておく。
1)自転車は、間欠的に地面に力を加えるランニングに比べて、常に地面に接するタイヤに連続的に小さな力を加え、大きなパワーを地面に伝え、速く走ることが出来る。
2)自転車は、転がり抵抗が氷上摩擦係数よりも3倍小さいため、パワーロスが小さい。
3)自転車は、車体に人間が乗って走るため、タイムトライヤル用(TT)バイクや、リカベント車等の車体の工夫により、空力抵抗を低減できる。
参考文献
[1]2017/10/7 ファンライド「コンピュータープログラマが自転車世界最速チャレンジをサポートしてきた話」
[2]AeroVelo "Eta The Fastest Bike on Earth"
[4]2024/8/16 UCI Men Elite world record
[5]Wikipedua スピードスケート競技の世界記録一覧
[6]SpeedSkatingStats.com "Current world records Men"
[8]ギネスワールドレコードコム"Fastest bicycle speed in a slipstream(male)"
[9]ギネスワールドレコードコム"Fastest bicycle speed in slipstream(female)"