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「自転車の車輪の転がり抵抗について-1」はこちら

BRYTON Rider750のすすめ-2

 前回記事で次回を予告しておきながら、2ヶ月以上が経過してしまった。これは言い訳になってしまうが、記事内容は8月中に検討完了していたのだが、他事に忙殺されて今回の記事着手が遅れてしまった。もしも今回記事をお待ちの読者がいたならば、心よりお詫び申し上げる。申し訳無い!!

 前回記事では、Bryton製サイコンRider750の良い点を強調したが、今回記事では、計測距離が約3%弱アンダーとなるという弱点に対して、その対策と検討結果について報告する。

 

(1)サイコンの走行距離精度に関する考察

 サイコンの走行距離の精度は、速度センサーの計測方式に大きく依存する。

 キャットアイの速度センサーはタイヤが1回転する時間(T)を計測しており(*注)、速度は、タイヤ周長(L)をTで除して、(1)式で示すように算出される。

(*注:今回記事では、この種のセンサーを回転時間計測型センサーと呼ぶ。)

  V=L/T----------------------------------------(1)

 一方、GARMINやBRYTONの速度センサーは、角加速度センサーである。計測された角加速度(α)に時間(T)を乗じて角速度を算出し、それを2πで除して1秒当たりの回転数に変換し、タイヤ周長(L)を乗ずることで速度Vが得られる。

  V=α×T×L/(2π)------------------------------(2)

 以下は筆者の推測だが、GARMINやBRYTONの角速度センサーにおいて、自転車が非常に遅い速度で走行した場合には、非常に小さな角加速度を正確に計測する必要が生ずる。そのようなケースで、実際の角加速度が検出限界以下となった場合には、角加速度はゼロとみなされ、したがって速度増加ゼロと計測されて、走行距離が小さくなる可能性がある。例えば、自転車が歩道を走行して歩行者と同等な低速で走行した場合、角速度センサーが正確に距離を計測することが難しいと推測する。

 したがって、走行距離の精度に限って言えば、回転時間計測型のキャットアイ製速度センサーに軍配が上がると考える。

 

(2)走行距離の計測精度向上の対応策について

 Rider750の走行距離の計測精度向上の対応策として、以下の2つの方法を検討する。

a)速度センサーとして回転数計測型のキャットアイ製速度センサー(ISC-12)を使う。

b)実際のタイヤ周長よりも大きめのタイヤ周長を設定する。

 上記a)の方法は、(1)で述べた仮説(回転時間計測型の速度センサーの方が測定精度が良いという仮説)に基づいている。Bluetooth接続のキャットアイのISC-12を実際に購入してRider750とペアリングを試したところ、残念ながらペアリング出来なかった。この記事を書く段階で、改めてBrytonのHPを確認したところ、Rider750はBluetoothセンサー非対応が確認された。Rider750は、スマホ接続でBluetoothを利用するものの、センサー接続ではBluetooth非対応ということらしい。他のRiderシリーズ(Rider15~420、Rider860)では対応しているのに、Rider750の非対応は誠に残念だ。

 そこでa)の方法に対しては、BRYTON Rider420とISC-12を接続して試してみることにした。Rider420に関しては、もともと距離の測定誤差が小さい印象で、またRider750のデータとの直接比較とはならないが、上述したようにRider750がBluetoothセンサー非対応なので、致し方ない。

 一方上記b)の方法は便法ではあるが、タイヤ周長Lを実際のタイヤ周長よりも大きく設定することにより計測距離を補正する方法だ。これまでのデータを精査して、タイヤ周長として2.5%大きな値をRider750に設定して試すことにした。

 

(3)走行距離の計測精度向上対策の実走試験

 上述した対策a)と対策b)について、自宅から横浜までの自転車の往復走行で試してみた。自転車は、私の普段使いのロードバイクパナソニックODR-6(2015年製)だ。タイヤは、700x25c(コンチネンタル製GP5000)を履いているので、タイヤ周長2105mmと設定するべきところ、Rider750には2.5%増の2158mmと設定した。また、Rider750と同時に、基準とするキャットアイのサイコン(CC-MC200W)およびRider420で同時計測した。BrytonのRider420は、キャットアイ製センサーISC-12とBluetooth接続で計測した。ODR6にサイコンを装着した写真と、計測条件の一覧表を以下に示す。

 

 8月21日に自宅から横浜の山下公園まで往復走行した結果を以下に示す。これまでRider750で3%近くアンダーに走行距離が計測されていたが、いずれの対策においても、以下に示すように距離差異(誤差)が1%以内に収まっていることを確認出来た。

 


(4)まとめ

 今回記事では、走行距離がややアンダーに計測されるRider750の弱点に対して、その対策と検討結果を報告した。これまでの結果をまとめると、以下の通り。

 1)Rider750では、実際のタイヤ周長よりも大きめに設定して、走行距離補正が可能。

 2)回転時間計測型センサーで、さらなる走行距離精度の向上の可能性がある。

 今回の記事で、Rider750の走行距離補正については、ひとまず完了とする。今後、最近リリースされたRider S800などのサイコンの最新動向について注意深くウォッチして、機会があればさらなる検討したい。