前回に引き続き、転がり抵抗について検討する。
前回の結論は、以下の(6)式で示すように、転がり抵抗係数Crrは、タイヤの設置面の長さL に比例し、タイヤの半径Rに反比例するというものであった。
(6)式中のeはタイヤの反発係数 である。 (6)式によれば、タイヤ幅を大きくするとタイヤの接地面の長さLは短くなるため、転がり抵抗 係数が低減するという興味深い関係が得られた。(6)式に実際の23cと25cのデータを入れて比較 すると、幅広の25cの方が23cに比べて、5%程度の転がり抵抗係数が低減する事例が見られた。
今回は、この転がり抵抗係数と転がり抵抗によるパワーロスの関係について考察したい。 自転車の速度をV(m/s)とすると、自転車は1秒あたりV(m)進むから、転がり抵抗に打ち 勝って自転車を進める力F(N)の1秒あたりの仕事量は、以下の(7)式となる。
Fは、転がり抵抗係数Crrと荷重Wにより、Crr×Wと表されるため、以下の(8)式を得る。
人を含めた自転車の質量mと重力加速度gで荷重Wを表すと、以下の(9)式を得る。
この(9)式は、転がり抵抗によるパワーロスP(W)は、速度Vと転がり抵抗係数Crrと、 質量mが比例するというシンプルな関係式であり、文献[1]にも記載されている。
この(9)式と文献[1]のコンチネンタル製GP5000(700×25c)のCrr実測値3.21×10-3 を用いて、パワーロスP(W)と速度との関係の計算した結果を以下に示す。 前提として、体重70kg自転車重量10kgを想定し、質量mは80kgと仮定した。
前回と今回の検討結果をまとめると、以下のことが言える。
参考文献